心の活動そのものの「記憶」と「忘却」
記憶 Memory
概要
見聞きした事や行った経験を保持して体内に留める事。後にそれらを再現して利用する機能。
符号化(記銘)、貯蔵(保持)、検索(想起)の3段階からなるとされています。
(「覚える」「忘れない」「思い出す」といった動詞で表されるものです)
『記憶』 には様々な切り口による分類や意味付けがなされ、概ね以下のような分類がなされています。
1.保持時間の長さ
「感覚記憶」(数秒以内に消えてしまう感覚)
「短期記憶」(15〜30秒以内に消えるもの)
「長期記憶」(ほぼ永久に残るもの)
2.情報の種類
「自伝的記憶」(日常世界での個人的な出来事の記憶)
「目撃記憶」(事件や事故等の非日常的な事柄に関する記憶)
「フラッシュバルブ記憶」(ショッキングな事柄に関する記憶)
「展望記憶」(未だ実現していない将来に関する記憶)
3.意識のレベル
「顕在記憶」
「潜在記憶」
「メタ記憶」(自分の記憶状態に関する記憶)
取り上げた理由
人の活動の全てを支えるものが 『記憶』です。
未だ解明されていない部分が多いのですが、「心に留めてに忘れずに再利用する」という、一連の記憶活動に対し、かなり大きな影響を与えるものが心(状態・あり方・気持ち)である事は間違いないものとして認識されています。
明確な定義や線引きは非常に難しいものですが、記憶活動は脳(反射的・不随意的に行われる活動もありますが)で行われ、何かを考える事全般を指す「心」の活動も脳で行われます。
記憶=心 と定義付ける人も存在します。
残念ながら、どんなに気をつけていても心にバイアス(歪み・偏り・思い違い)が働く事は避けられず、心で行われる記憶活動にもバイアスが働きます。 人の心が不安定である事と同じく、人の記憶もかなりいい加減なものと言えます。
勝手に改ざんして覚えてしまい、それを思い出す際にも更に改ざんして思い出します。
程度の差はありますが、基本的にあてにしてはならないのが他人の記憶です。
一般的に仕事上の経験が未だ乏しい若手社員にとっては、他人の記憶に頼って仕事をする場面が数多く訪れます。
業務手順や仕事の情報を教えてもらう際に全面的に頼っているのが他人の記憶です。
「他人を信用するな!」といった極端な事ではありませんが、他人の記憶は意外な程にあてにできない事をよく理解し、頼るべきは自分の目や耳で確認をとった情報である事を具体的な確認行動に転化する事で、無用なトラブルが減少するはずです。
忘却 Forgetting
概要
過去に抱いた感情や各種の情報に関して思い出す事や意識することができないこと。
記憶を忘れてしまう(失ってしまう)こと全般を指します。
通常「記憶」は、時間の経過とともに曖昧なものとなり、やがて忘れ去られていく事が当たり前として広く認識されていますが、「忘却」の原因について多くの考えが発表されています。
「減衰説」
時間の経過とともに次第に消失し、ついには思い出すことができなくなる
「干渉説」
記憶した際に(記銘)に同時に抱いた感情によって影響を受け、忘却が起こる
「検索失敗説」
記憶を失ってはいなが、思い出すための手掛かりが無いために思い出せない
「抑圧説」
不愉快な事柄は自動的に無意識の世界へと押し込められる
取り上げた理由
「物忘れ」や「ど忘れ」は脳の老化現象として捉えられる事が一般的で、仕事上のあまり有り難くない瞬間として認識されています。
仕事を進めていく上で、正確な記憶力は非常に重宝する武器となりますが、記憶力の良さが大きなアダとなる場合があります。
記憶対象に対する興味や関心のレベルに左右される記憶力ですが、一般的に記憶力が良いとされる人は何に対しても高い記憶能力を発揮します。
そんな人は、仕事や勉強、生活に必要な記憶だけではなく、嫌な記憶に対しても高い記憶力を示してしまいます。
仕事や人生を続けていく上では、「上手に忘れる」「フタをして思い出さない」「水に流す」といった、忘却に関する技術が大変重要になります。
『敏感』『繊細』と周囲から言われる人をそう言わしめているのは、高い記憶能力とそこに働くバイアスです。
事実としての事柄と、その事柄に直面した際に抱いた負の感情を深く結び付けて記憶し、
「悔しくて仕方ない」「絶対に許さない」などと、長期間に渡って記憶し続けます。
具体的な方策を示す事は出来ませんが、記憶する事が大切な技能であるのと同様に、忘却する事や記憶しない事も非常に大切な技能という事だけは間違いありません。
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